「あれ、なんだっけ」

一介の人の妄言と出来事

回想 ロフトのある部屋

抱き締められた体の重み、触れる頬の柔らかさと温かさ、華奢にも関わらず手を回して知る背中の広さ、立って抱き締めた時に感じた顎を肩に置きづらい身長の高さ。

そして何より嬉しかったのは、ふと眠りの世界から戻った時に最初にあった感覚が頭を撫でられていたこと。この人の部屋は私の部屋より暗い。だから顔が全く見えない。けどもその手の感覚だけは確かだった。私の頭にそっと手を置いて優しく親指で撫でてくれている。そして左手に感じる手を重ねた温もり。

この人は演技をしている訳ではなく、本当に好いてくれてるのだ。そうではない人が寝ている間に頭を撫でてくれることはない。そう自惚れざるを得ないほど幸せであった。

己の好きという感情をこの人を振り回しているのかもしれない、この感情に付き合わせているかもと申し訳なかった。けど大丈夫だよ、とこの時言われているような気がした。