職人おじさん
友人と牡蠣小屋へ行った時の話。
入った時に迎えてくれた店員の一人は、もう還暦前だろうか?板前をやっているような貫禄があり、接客業のイメージであるさわやかな笑顔や声色、そういうのは一切なかった。少し怖ささえあった。
食べ進めている間、食べ終わった食器をすぐに下げる姿。そこにも言葉はほぼなかったが、会話の邪魔にならないようにしていることがなんとなしに分かった。
そんな店員さんが声をかけてくれたのは牡蠣のこと。
「あまり熱し過ぎると、殻が爆ぜるからもう避けておくように」
「生牡蠣は、早いうちに食べてしまうのがいいですよ」
「貸してください。殻、剥きますよ」
その言葉らには気遣い、牡蠣を美味しく食べてほしい気持ちがこもっていて、帰り際には、自分も友人もその人のことが好きになっていた。
ああいうプロフェッショナルさにも憧れる。