「あれ、なんだっけ」

一介の人の妄言と出来事

青山通り

 コロナと言われ続け、現在も要請に応じて極力家から外に出ていない上に自分が行っていたバイト先までもが影響をもろに受けて丸々無くなったために運動不足が否めない。このままではまずいと考え、試験を受けた帰りにJR線まで歩いていくことにした(その試験は私鉄のみしか通っていないところが最寄だった)。試験が終わってからの心持たるや、本当に終わったのか?というふわふわとした気持ちのまま青山通りをひたすらに歩くことを始めたのである。

 時刻は約12時過ぎ。歩いていて驚いたことがある。それは、スーツを着た会社員たちが何人かで和気藹々としながら道を歩いている割合がとても多いことだ。春先だからというのもあるかもしれないが、コートも羽織らず、バッグも持たずに持っているのはスマートフォンと財布ぐらい。何人かは社員証を首から下げて歩いていた。高校や大学で見た光景がなんと社会人までそうなのかと思うととても心が暖かな気持ちになった。

 それにしてもここの通りはお店や会社が大きい。ランボルギーニボルボ伊藤忠の会社を通ってはウインドウの前に立ちぼうっと眺め続けたい衝動に駆られる。

 

****

 

 歩いている中、とてもゆったりとした足取りで、けれども自分をすっと抜いていく足の長い女性がいた。ああこれが都会の女ってやつか、素敵だな。と後姿を眺めていた。ふと目が足元に移る。そこには白っぽいミュールを履いて踵を真っ赤に濡らした痛々しい左足とそうなってもおかしくない右足があった。

 嗚呼、この人も都会に慣れるために努力をしているのかもしれない。そう考えたらこの通りにいる人たちもみんな元は自分と同じ心境だったのではないかと思えてこの場所が好きになった。

 

 さて、寄り道をしていたらざっと1時間ほどで無事に到着した。今日はこの辺で。