手
体を動かしたいというふとした発言からスポッチャに行くことになり、自分の家から近い駅からバスが出ているとのことでその駅で集合した。いつもはこちらの方が集合場所に行くのに時間がかかりがちだから新鮮な気持ちであった。
バスの中では「自分は近いうちに髪の毛をばっさりと切ってしまう。他の人にこの髪型を見せるのは最後だからさよなら言っておいて」と自分の髪を触りながら言うと「ばいばい」と言って髪の毛に触れられたのが面白くて内心とても笑っていた。
到着すると卓球から始めたが意外に強くてびっくりした。前日の快晴とは打って変わりなかなか強い雨も降り寒かったために、屋外にあるピッチングなどができなくなっていてしょげていたのでリベンジしたいところだ。インラインスケートもした。自分は昔かなりはまって猛練習したので得意な方である。
「ちょっと加速してみるね」
といって滑る。やはり楽しい。一周回って帰ってきたところで、
「まさかこんなに加速しちゃうなんて。これならきっとスキーもできるよ」
と驚いた顔で話してくれた。
インコースをよたよたと進む彼に手を差し出す。
「ん、どうぞ」
「お願いします」
途中で2人でこけて、自分だけ大爆笑していた(こうやって練習していたのが懐かしくなった)。
ゲームもしたが、ホッケーは1引き分けがいい方で全部負けて勝ち誇った顔で大笑いしていたので小突いていた。音ゲーは拮抗した戦いとなった。
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お昼ご飯をこしらえるためファミレスに入るとデカンタ(小)でワインを赤白で頼み、自分は40%のお酒も飲んでなんと3時間半も居座っていた。
「寒いぃヘルプ」
手を出してみる。
「うわ、ほんとじゃん」
きゅっと手を握られ、そのままポケットの中へ。帰ってからのLINEで知ったことだが、一度してみたかったことらしい。とても嬉恥ずかしいものだ。
「あぁぁ…あったかい!!こういうのってやっぱり逆なはずなんだよね、少女漫画とかでありそうなのって『お前の手あったかいな』って言うの男子じゃん」
「ぷっ、確かにそうだ、やっぱり逆だよなあ」
中で手をつなぎ直す。今度は恋人つなぎだ。
「右手あったかくなったよ、ほら」
首に手を当てる。
「おぉほんとじゃん」
「けど左はまだ変わらずなんですよね」
「場所逆になろっか」
逆に立つと再び手を取り駅周辺のお店をふらふらと歩いた。
電車で帰るのなら定期券持っているし途中までついていくよ、と話したら即答でじゃあ電車で帰ると言ってくれたので送った。最後に頭を撫でていたらありがとうと撫で返してくれたのが青春を謳歌している感覚を抱いた。いい1日になってよかった。