回想
離れていても一緒。そう言って私はおばぁがビーズで作った手鞠のキーホルダーを渡した。貰うときにおばぁから繰り返し言われた。
「これは2つで1つだからね、絶対にペアで持って帰って。ほらみて。必ずどこか1つは同じように作っているからね、これは紐、これは紐をつなぐところのビーズが同じ、これは中に入っているものが同じだからね。鈴のとマース―のがあるよ。マース―は清める力があるんさぁ」
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「おばぁ、これすごい!なんでこんなに鞠があるの?」
「ん?それおばぁが作ったものよ。おばぁに欲しいと頼んできなさい。きっといくつかもらえるよ」
「そんな、こんな綺麗なものもらうだなんて」
「いいよ、こんな大したことないものでいいならもらって、そんなに嬉しがってくれるなら、おばぁ、また教室に通うかな。」
「通って!たくさんおでかけしてほしいし作ってほしい、また私に頂戴ね」
「琉球ガラスもあげようね、これは知り合いの人が作っててくれたものさぁ。ワインを入れて飲んだら良いよ」
「こんな上等なものこんなにもらえないよ、ショーケースに入ってるのに」
「いいの、最近色んなものあげてるんさぁ。
鍋もね、昔は正月になるとおじぃの兄弟が来て宴会してたから大きいものがあるけれど、おばぁが料理を作られなくなってからはみんな来ない!だから来週大阪から来るっていうからきょうだいに渡すつもり。」
「そっか……、これ絶対大切にするから。ありがとう本当に」
空港に向かう前、最後にぎゅっと抱きしめる。硬直してたじろぐおじぃ。めいっぱいの力で抱き返してくるおばぁ。言葉には出さないけど、きっとあと少ししか、いや、下手したらもう会えなくなるかもしれないから。私の帰る場所を忘れたくなくて風景や顔を目に焼き付けた。
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