「あれ、なんだっけ」

一介の人の妄言と出来事

終電と星

「あ、イルミネーション!」
アパートの前に立っている2本の木が電飾を施していた。実は近くに寄るまで蔦に電飾を施していると思っていたのは内緒である。
あれもそうだよ、これすごいね、と心が踊る。渋谷や恵比寿のイルミネーションもいいがこういう家のモノでも十分素敵だ。

***

空気が澄んでいるのを息を吸い込んで感じた。コツコツとヒールの音が響く。
「また、ごめんなことをしたなあ」
「そんなに気にしないで、大丈夫だよ」
どうもこの時間のせいか、前と同じように電車が遅れる。謝るべきなのはここまで帰らない自分だというのに。

「うーん星見えないのかな」
「星見えるよ、ほらあそこ。お~オリオン座がはっきりと見える」
「うわあ~!ほんとだ」
「冬は綺麗に星が見えるからいいよなあ」

***

家の前になって、落ち葉を踏む。秋がまだ残っている。
立ち止まって空を見上げた。星が多く見えていて電車に乗る前に見たオリオン座もはっきり見ることができた。
嗚呼このままこの時が続けばいいのに。手の温かさを思い出してぎゅっと自分の手を握った。

感傷的な気持ちになっていたのにも関わらず長いバイブ音がそれを遮る。

しまった。せめてサイレントモードにしとけばよかった。