「あれ、なんだっけ」

一介の人の妄言と出来事

Sence Like a Cottoncandy

 「最優秀賞取った!」
と、授業終了間際に彼女の書いた文が優秀作品として選ばれたとLINEが届いた。一部の知人はきっと僕のことを書いていると気付いただろう、僕がドイツに行くことは巷に知られていることである。
 実際にいる人を題材にして僕は大っぴらに表現することがなかった。だから余計に題材にされてこんなに嬉しいとは思っていなかったし、僕を想起して作品を書き起こしたことに何よりも驚いた。僕がしたことは彼女が食べたいと話した親子丼を作っただけなんだけども、その行為・思い出が素敵なものだと思われたであろうことも誇らしい。
 ばんと大きく喜びが爆発するというよりもじっくりと喜びが長く続いていて。この喜びをモノにしたいと思い立って、六つ切り絹目調の写真用紙を一年ぶりに取り出した。

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 話を聞かせて欲しいと言ってくる何とも物好きな友人が増えた。通話をしたいと言われたのは本当に久しぶりだ、いつもは自分からそういう話を切り出す。
 ないものねだりとはこういうことなのかもしれないが、持っていないものをたくさん持っていて尊敬する。一番すごいのは優しさの深さだ。
 優しさは時として己や下手をすれば他人をも苦しめるものになる。人を包んだ優しさで己を忘れてしまわないか、傷つけてしまうことになるのではないだろうか。強くなって、そんな彼の逃げ場になれるようになりたい。
 逃げ場になるためにはまず聞き上手になりたいが、聞き下手で申し訳ない(自分ではそう思っている)。ただでさえよく話をするけどもっと話してもいいのだろうか、下手をすると一方通行になりうる。
日々の眠い、お腹すいたから一言では言い表せられない複雑な話までしたい。ちゃんと顔を見ながら。