「あれ、なんだっけ」

一介の人の妄言と出来事

湯船

元栓を上げて、ボタンを押す。少しすると温いお湯。
お湯の温かさで己の冷たさを知ってぶるりと震える。これほど自分の身体は冷えきっていたのか。
湯船に浸かる。この包まれている感覚がたまらない。しばらく浸かっていると湯船と一体化して自分が液体になってまざりあえるのではないかという感覚を抱く。
このままゆらゆらと湯船の波に揺れて、ガムシロップのような陽炎になって沈みこんでいきたい。柚子の匂い。縁だけが緑に見える湯船、オレンジ色の電気。