「あれ、なんだっけ」

一介の人の妄言と出来事

夢を殺める

コロナのせいで、渋々承諾してくれた親が渡航を辞めろと言った。
「後期に行くのだからまだ望みはあるでしょう、学校から留学辞退の連絡が来たら流石に大人しく従うけれど。」
そう言って親からの反対を一蹴して、何とか希望を、留学をする可能性を考えながら気持ちを作っていた矢先だった。

警戒レベルが下がって行けるようになれば、通常通り渡航して現地で生活する手続きを踏んで授業を受けるか、はたまた、下がらない場合は開講されていれば日本にいながら先方のオンライン授業を受講するか、

それとも、留学を辞退するか。

そういうメールが来た。
無論心の片隅には、ずっとそのことも考えてきていたから遂に来てしまったのかと最初はダメージはあまり来なかった。けれども今になって来ている。留学に行くから、頑張ってくるから。立派だ、見送りに行くよ。そうやって色んな人に話してきた。応援されてきた。

まだ行ける可能性も残されてるのに、まだ渡航まで半年残されてるのに、辞退しますと言ったことがどれだけ苦しいことか。

親との取り決めだったとはいえ、この辞退を進めるのは自分だ。まだ辞退しなくてもいいんじゃないか、好転するんじゃないか。そういう葛藤の末だった。

「父さん、留学辞退の案が届きました。」
「断腸の思いですが留学を辞退することにしました。」
親に伝えるのに、教授たちにこのメールを打つのに、どれほど悩んだか。これは、共有できない程の苦しさだ。分かってたまるか。辛いねとそっと慰められるだけでいい。分かるよだなんて言葉は要らない。

学校に留学辞退届を郵送した翌日、留学先の大学から入学許可が下りたメールが届いた。
本当は行けたはずの留学を自分で殺めた。

嗚呼。それでも明日は来る。